北京は言うまでもなく中国の首都ですが、東京と同じように昔から首都だったわけではありません。どのような経緯で首都になったのか、そしてそれ以前はどのような街だったのかを分かりやすくご紹介していきます。
歴史が苦手という人でも、知っておくだけで北京のことを身近に感じられるようになる内容になっていますので、北京を訪れる前には読んでおいてください。
北京原人時代
北京を語る上で忘れられがちなのが北京原人の存在です。周口店の北京原人遺跡は世界遺産に認定されていますが、アクセスの悪さから日本人どころか中国人もそれほど訪れることがありません。
北京原人は人類の歴史においては重要な存在ですが、中華の歴史の中で語られることはありません。
すでに歴史の授業の内容を忘れている人もいるかもしれませんが、北京原人が現代人に繋がっているわけではありません。類人猿から人間になる過程の亜種であり、歴史の流れの中で絶滅しています。
北京原人が暮らしていたとされるのが、68~78万年前ですので忘れ去られて当然ではありますが、そんな昔から北京には人が暮らしていたということを覚えておきましょう。
北京創設期
北京原人が暮らしていた時代から、かなりの年月を経て北京には薊(ji)という小さな国ができました。紀元前1600〜1000年のことです。薊国を作ったのが周王朝で、春秋戦国時代になると燕王朝に吸収されることになります。
薊国は周辺の様々な民族が交易する町として栄えていたこともあり、燕王朝の都としてさらに発展を遂げます。その燕王朝も紀元前226年に秦に滅ぼされてしまいます。
北京の古い名前として燕京と呼ぶことがありますが、これは「燕王朝の都」という意味が込められています。
薊国の城である薊城遺跡現在も北京に残されています。広安門駅から歩いていけますので、興味がある人は「蓟城纪念柱」で検索して行ってみてください。中国の長い歴史を感じられる数少ない場所のひとつです。
北京が中華の歴史の中心になる
燕王朝が滅ぼされてからの北京は、中華に数ある都市のひとつでしかありませんでした。そんな北京が歴史の舞台に再び登場するのが、契丹族の王朝である遼が北京を含む燕雲十六州を割譲されてからです。
北京は遼の第2首都となります。このときの北京は遼の南側にある都として「南京」と呼ばれます。現在の南京とは関係ありません。
遼はその後、女真族の金国に滅ぼされますが、1153年に金国の都「中都」になります。このあたりの歴史は、北方謙三さんの水滸伝を読むと分かりやすいかもしれません。単行本も発売されていますので、歴史が好きな人におすすめです。
目まぐるしく変化が起こる時代で、この金国もモンゴル民族である元に滅ぼされます。元は北京を「大都」として1267年から26年かけて大工事を行います。このときに現在の北京の原型が作られています。
そんな元の時代も100年で終わりを告げます。1368年に元を北京から追い出したのは紅巾の乱の将領である漢民族の朱元璋で、モンゴル民族から北京を奪還した後に明を建国します。
明は都を南京(現在の南京)に制定しますが、世襲問題のトラブルがあり、最終的には北京を都とします。モンゴル民族から取り戻したときには、北平と呼ばれていましたが、再び都になったときに「北京」となりました。
1644年に明が満州民族に滅ぼされますが、新しい王朝である清は明の文化をそのまま引き継ぐ道を選んだため、そのまま北京が都になります。
中華民国から中華人民共和国へ
ここからの歴史がとても複雑で、日本人が苦手とするところです。
アヘン戦争や日清戦争を経て清王朝は事実上崩壊していましたが、歴史として清の時代を終わらせたのは、1211年に勃発した辛亥革命です。辛亥革命を率いたのが中国革命の父である孫文です。
辛亥革命により中華民国が設立されますが、中華民国の都は南京にありました。1212年にラストエンペラー宣統帝・溥儀が退位したのをきっかけに、中華民国の袁世凱が北京に進出して、北京政府(北洋政府)として北京を中華民国の都とします。
北京政府は臨時政府ということもあり、1927年に蒋介石が率いる国民政府が実権を握り、南京を首都として北京を「北平」という呼び名に戻します。その名残もあり、現在でも台湾では北京のことを北平と呼ぶことがあります。
北京はそこから苦しい時代が続きます。1937年から1945年までは日本が占領していますが、それに反発した中華民国との激しい戦いが繰り広げられました。日本占領時代は「北京」でしたが、第2次世界対戦が終わると、北京は再び「北平」に戻ります。
ただし、中国国内はこれで安定したわけではありません。今度は国民党と共産党の内戦が1946年から始まります。結果的に蒋介石が率いる国民党が、毛沢東の率いる共産党に敗れて台湾に逃れることになります。
そして、1949年10月1日に中華人民共和国が建国され、北京が再び中国の首都に返り咲くことになり、現在に至ります。
まとめ
かなり複雑な歴史を持つ北京ですが、清王朝時代の終焉くらいから追っていくと、その陰で様々な日本人の姿が見え隠れします。日中戦争に関しては、中国人の友人ができると、必ず議論になり日本人はその歴史を知らずに困惑します。
きちんと歴史を学ぶのはかなり難しいのですが、浅田次郎さんの蒼穹の昴シリーズを読むと日本人がどう関わったかが見えてきますので、こちらもぜひ北京に行く前に読んでおきましょう。
戦争が絡むとどうしても及び腰になりますが、そこからは逃げずにできるだけ多方面から日本と中国の関係について学ぶようにしてください。そうやって歴史を知れば北京をもっと好きになるはずです。